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【電波的な彼女1】異常な中にも論理アリ。無差別殴殺事件を追え【片山憲太郎】

小説『電波的な彼女』1巻表紙

小説『電波的な彼女1(片山憲太郎 著)』の感想レビュー。

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あらすじ

見知らぬ少女にいきなり忠誠を誓われた不良少年の柔沢ジュウ。
堕花雨と名乗る彼女の奇妙な言動に振り回されながらも、
ジュウは徐々にその存在を受け入れていく。
気がつけば何かとちょっかいを出してくる同級生・紗月美夜の3人と
不思議な関係が構築されていた。
しかし、巷を騒がす連続殺人に巻き込まれてから、
ジュウは雨に不信感を抱くようになり・・・。
人間の歪みが起こす、驚愕のサスペンス!

感想

本作は異常者も異常者なりの倫理を持ってる。

「人を殺すというのは大変な重労働です。
思い付きで何度もやるには、リスクが多すぎる」
「だから、犯人は何にも考えてねぇんだって・・・」

「被害者は、いずれも殺されているんですよね?」
「ああ、みんな死んでる」
「だとすると、やはりなにか理由があるのだと思います」

「腹いせだろ?
理由もなく怒ったりして、その怒りを他人にぶつけてしまうってやつだ」
「理由もなく怒ることなど、ありません
どんな李ユジン奈ものであれ、何かしらの理由はあるものです。
怒りという感情は、相当に疲れますから。
理由もなく怒るのは無理ですよ」

(中略)

「でも、ほら、俳優とかは余裕でやるじゃねぇか、怒りの感情表現」
「たしかに、訓練によって表現は可能です。
それでも疲れる事には変わりない。
泣くという感情表現を一時間も続ければ、かなり体力を消耗します。
笑うのも同様です。怒るのも、やはり同様。とても疲れます。
もしジュウ様の指摘したとおりだとすれば、
犯人は理由もなく怒り、基準もなく被害者を選んで殺す、
という行為を何度も繰り返していることになりますが、
これは犯人の側にとっても大変な負担でしょう」

・・・だから何か理由があるってのか?
犯人が異常者でも?」
「異常は異常なりにルールがあるものです。
完全な支離滅裂など、そうはありません」

雨の考察の通り、犯人はとある基準で殺人を行っていた。
その基準を読者が容認できるかは別としてね。

てかヒロインの雨も十分異常なので、
不良のジュウが相対的にまともに見えるという。

そしてなによりジュウたちが住んでいる都市は異常に治安が悪い。
数十件発生している無差別殴殺事件なのに警察はなぜ調査しないのは、
他の事件がもっと凶悪だから。

・幼稚園児ばかりを拉致し、両目をえぐり抜いてから解放するという『えぐり魔』
・封筒に小型爆弾を入れて投函。開封した瞬間に爆発する無差別連続殺人事件。
・両手両足を切り落とした死体の胸に「当選祈願」と血も字で書き、選挙事務所のダルマと置き換える殺人事件
・誘拐された女性の首だけが親元に宅配便で届けられた誘拐殺人
・子供たちの間で流行したよーむれす連続殺人事件

などなど。
連続殴殺事件なんか目じゃない過激な事件が盛りだくさん。

次巻の事件の予定なのかしらん?
※二巻は『えぐり魔』について扱っているらしい。

学生が遭遇するにはとんでもない事件だけど、
そこを一般学生からはみ出さずに解決し、
猟奇的な事件の全貌にもある程度の納得を得られる小説です。

参考動画

ピエ郎さんのレビューを読んで興味をもちました。
紹介する漫画、小説みんな一癖二癖あって凄いぜ・・・

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