小説

【八月の銀の雪】誰かしら悩みはもっているもの【伊与原新】

『八月の銀の雪』表紙

八月の銀の雪伊与原新

もくじ

感想

八月の銀の雪

大学を一年休学し現在大学四年生の堀川。
就職活動が上手く行かず、近所のコンビニで働くアジア人の留学生女性に悪態をつく毎日。
そんなコンビニで偶然大学の講義で一緒になった堀川が話しかけてきた。
堀川は、現在、アリフィエート?仮想通貨ウォレット?のビジネスを行っており、堀川も勧誘してきた。
疑心暗鬼になりながら仕事を手伝うものの、自分は何をやっているんだろう・・・と思う日々。

優秀だと思っていた堀川が周りから見下されていた事実、
見下していたはずの留学生が実は優秀で会話してみると信念を持っていた事実、
堀川は何を思うのか・・・?

自分が原因なのに周りのせいにして腐っている堀川。
コンビニバイト留学せいのグエンと会話を重ねる内に、
現状は変わっていないけど、前に進もうとする堀川。

これから面白くなるぞ!
ってところで終了。
第二章が始まるのかと思いきや、これ、短編集なのね!?
・・・続きがきになる終わり方でした。

海へ還る日

娘が一歳になる前に離婚し、女手一つで娘を育てている。
今日も娘が調子を崩し通勤時間帯にベビーカーと一緒に車内に居る私たちに周囲の視線が痛い。
愚図る娘をあやしていると、柔和な老女が娘をあやしてくれた。
クジラのシールをくれ、最寄りの博物館で貰えるとのこと。
娘がクジラを気に入ったので寄ってみると、そこには先ほどの老女がいた。
そこから老女との交流が生まれ、クジラの知識も深まっていく。
クジラを通して、悲観的だった私にも心境の変化が・・・

自分の不幸な生い立ちと同じような境遇にしてしまった娘への罪悪感から心が病みがちな女性の話。
たまたま出会った人との交流から少し前向きに目標を持てるようになる。

アルノーと檸檬

役者を目指して親の反対を振り切って上京した正樹。
唯一応援してくれた祖父が危篤でも役者のオーディションを優先して勘当されてしまう。
結局、役者として芽が出ず不動産屋に就職し煮え切らない生活をしていた。
正樹の現在の仕事はボロアパートの住人の立ち退きを成立させること。
ある日、立ち退きの打診に302号室の老婆を訪ねると伝書鳩が迷い込んでいた。
調べていくうちに鳩は三年間飼い主の元に戻らず、その間に飼い主は死亡。
鳩舎のある家はマンションになってしまっていた。
正樹は家が無くなってしまった鳩と、家を飛び出した自分とを重ねる・・・

役者になるため同じ志を持ったルームメイトに先を越され、気持ちが腐っていく正樹。
自暴自棄になってただ生きているだけという状況。
こういう展開、好きですわ~
些細な事で気持ちの整理ができるんだよね。

玻璃を拾う

久しぶりにSNSを覗いてみると、
過去SNSにアップした写真にコメントがついていた。
「あなたが投稿した画像は僕の作品です。
著作権侵害にあたるので、即刻削除してください」
「最後通牒です。これ以上無視し続けるのであれば、法的手段をとります」
など、同一人物から不穏なメッセージが届いていた。

写真を確認してみるものの、どこで撮った写真なのか不明。
アップした理由はデザインが素敵だったから。

意味不明な上に陰湿に絡まれるのが怖くなって友人に相談すると、
ひょんなことから写真の出どころとメッセージ送ってくる犯人が分かった。

友人と一緒に犯人に会ってみると、アップした写真は、
珪藻を使ったアートであること
珪藻アートは細かい作業の連続であること
が分かった。

珪藻アートにはまつ毛を使って描くという。

画像検索してみたんだけど珪藻アート凄い綺麗。

アートに使う部品から始まる恋愛ってのも面白い。

十万年の西風

原発関係の保守会社で働いていた主人公。
パイプの破損個所を報告すると、事実と違う報告書を上げて修理することを打診された。
理由は原発問題に対する市民感情を憂慮した結果だった。
主人公はそれが嫌で衝動的に仕事を辞めてしまう。
自由になった時間を使って311後の福島第一原子力発電所を一目見てみようと車を走らせ、茨城県県の長浜海岸で休憩してうたところ珍しい凧を揚げていた老人と出会う。
老人は趣味の気象観測のために凧を上げているとのこと。
上空には十万年前から変わらず同じ方向に吹く偏西風が流れているという。

第二次世界大戦末期日本が行った風船爆弾の話。
結構身近な場所から放球していたんだね。

お互いの心情を吐露する内容化と思ったら、意外なところで歴史の勉強をしてしまった。

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