小説『剣樹抄(冲方丁 著)』の感想レビュー。
あらすじ
捨て子を保護し、諜者として育てる幕府の隠密組織〈拾人衆(じゅうにんしゅう)〉。
これを率いる水戸光國は、父を旗本奴に殺されてのち、
自我流の剣法を身につけた少年・六維了助に出会う。
拾人衆に加わった了助は、様々な能力に長けた仲間と共に各所に潜り込み、
江戸を焼いた「明暦の大火」が幕府転覆を目論む者たちによる
放火だったのではという疑惑を追うが――
江戸城天守閣を炎上させ、町を焦土と化した明暦の大火。
そこから復興せんとする江戸を舞台に、新しい諜報絵巻が、いま始まる!
感想
江戸時代初期ごろのお話。
物語は、明暦の大火(振袖火事)の明暦3(1657)年の前後。
冲方先生はこの時代の話が得意なのかな?
【光圀伝】水戸黄門こと水戸藩2代藩主徳川光圀の生涯を描く【冲方丁】
【天地明察】挫折を繰り返し、日本の暦に挑み続けた男たちの物語【冲方丁】
主人公は、六維了助少年。
父親と一緒に宿なしで暮らしていたところを父親が役人に捕まり、いきなり惨殺されてしまう。
その後、父の友人と一緒に暮らすけど、養父も明暦の大火で了助をかばいながら死亡。
その後、その日暮らしで芥拾いをする了助に孤児を引き取り育て密偵として教育する『拾人衆』に拾われる。
拾人衆の当面の目的は、明暦の大火を引き起こした犯人をみつけ捉えること。
了助の目的は、父を殺した役人を見つけ仇をとること。
また、養父を失う原因になった明暦の大火の犯人を見つけ仇をとること。
利害が一致した了助は、『拾人衆』に厄介になり、同年代の子と一緒に暮らし、
心身ともに成長していく。
そんな内容。
剣樹抄の文体
冲方先生の同時代の本、『天地明察』『光圀伝』と比べると、
読みやすさでいえば、
↑読みやすい
・天地明察
・剣樹抄
・光圀伝
↓硬派
という印象。
前情報も無しに読みだして、光圀の名前が出た辺りで、
(この本も『光圀伝』みたいな重厚な内容じゃなかろうか・・・)
なんて警戒したけど読みやすくってよかった。
六維了助の成長物語
光圀自身が了助に弱みを感じているので、
事あるごとに贖罪?の意味も込めて親身になってくれる。
そのお陰で多方面に才能を持ち合わせている了助は能力を開花させてゆく。
特に、我流剣術として磨け上げた剣捌きは中々のもので、
そこに基本剣術のすり足を組み入れさらに磨きをかけてゆく。
けど、錦氷ノ助には届かないんだよね。
バチコーン!と成長した瞬間を見たかった。
非常に続きそうな終わり方をしたけど、続編はあるのかな?