『首無の如き祟るもの(三津田信三 著)』感想レビュー。
村の因習と呪い
あらすじ
奥多摩の山村、媛首(ひめかみ)村。
淡首(あおくび)様や首無(くびなし)の化け物など、
古くから怪異の伝承が色濃く残る地である。
奥多摩の山村、媛首(ひめかみ)村。
首を切り落とされた女の霊、淡首(あおくび)様
そこから派生した首無(くびなし)の化け物など、
古くから怪異の伝承が色濃く残る地である。
そんな土地に住む、
本家の一守(いちがみ)家と分家の二守(ふたがみ)家、三守(みかみ)家からなる秘守(ひがみ)一族は、
淡首様に呪われた一族だった。
淡首様の呪いを跳ね返そうと様々な呪いで抵抗し、
一守家の嫡男が行う、三々夜参り(さんさんよまいり)と呼ばれる
子供が3,13,23,33歳になる年の仲秋に、媛神堂に参拝する儀式もその一つ。
一守家嫡男、長寿郎(ちょうじゅろう)と双子の姉妃女子(ひめこ)が十三夜参りをしている時に事件が起こった。
なんと妃女子が首を切り落とされた死体で発見されたのだ。
これは、秘守一族を呪う淡首様の呪いなのか、はたまた人間の仕業なのか。
事件は迷宮入りしてしまう。
そして時は流れ、迎える二十三夜参りの日。
またしても首無し死体が発生してしまった。
しかも今回は、長寿郎が殺されてしまい、一守家の男児は失われてしまった。
これは、淡首様の呪いなのか?
本家を狙う二守家、三守家の仕業なのか?
媛首村の駐在、高屋敷元(たかやしきはじめ)の妻、 妙子(たえこ)が作った連載小説という形で物語は進んでいく・・・
感想
『刀城言耶(とうじょうげんや)』シリーズ二作目にしてシリーズ最高傑作と噂される本作。
なるほど。最高傑作の名に違わぬ出来ですね。
一作目を読んで居ても問題なく楽しめた。
というか、刀城言耶はほとんど活躍していないよね。
終盤とかさ、関係ないし、ねぇ?
本作のトリックは、首無し殺人。
首無し殺人といえば、入れ替わりトリック。
死んだと思った人間が実は生きており、死体は別人だった。
というのがお約束。
名作と呼ばれる古典ミステリーはトリックを真似た作品が多くあるけど、
本作の事件が起きた時代は昭和中期(1943(昭和18)年と1953(昭和28)年)。
指紋鑑定なんかも現場検証で機能し始めていて古典のように安易に死体の入れ替わりは難しい。
そんな中でも入れ替わりを成功させちゃうトリックはお見事!
これが分かったらすげーぞ。
名作は模倣されるのが世の常だけど、こいつは誰も真似できない構成だ。
昔々から続く村の因習や呪いに怯える人々いったおどろおどろしい設定を上手く使った極上のミステリー。
事件解決まで作中で20年以上。
どうしても長編小説になってしまうけど、
唯一無二の物語。堪能しませんか?