小説『二百十番館にようこそ(加納朋子 著)』の感想レビュー。
「無職ニート、島暮らし始めます!」というより、「無職ニート、島流しされました」が正解。
あらすじ
就活に挫折して以来ずっと、実家でオンラインゲーム三昧の日々を送る“俺”に転がり込んだ伯父さんの遺産は、離島に建てられた館を丸々一棟。なんと無職から一転して不動産持ち、これからは課金し放題だ!と浮かれて現地を下見に行った俺は、まだそれが両親からの最後通牒であることに気づいていなかった……。
「もう面倒見きれない。そこで一人で生きていけ」
いきなり始まった強制自立生活。とにかく金銭問題を解決するべく下宿人を募ることに。
母親に送り込まれてきたニートのヒロ、無医島には是非とも呼び込みたい元医者ニートのBJさん、遊び人風のリア充・カインさん……ゲームの中にあった人間関係は、島のおじいちゃんおばあちゃんも巻き込んで、だんだんとリアルの世界へと広がっていく。
立ち止まっていたニートたちが、おっかなびっくり歩き出す前の「人生の夏休み」が青い空と海のもとで始まります!
感想
就活で失敗した無職が、親に愛想をつかされて叔父の遺産である島の研修施設に遺産相続という形で島流しにされてしまう本作。
まとまった生活費は貰ったものの、じわじわ目減りしていってしまう資金に研修施設に住人を住まわせ、家賃を徴収することを思いつく。
建物の名前は、ニート→210→二百十番館。
オンラインゲームが無職ニートを生み出すためだけのアイテムかと思いきや、二百十番館への勧誘につかったり、
住人になる社会不適合者たちとの交流ツールになったり。最後は・・・な、大活躍をするオンラインゲームなのでした。
親(叔父)の因果が子に巡り、主人公は島の住人からほどよい歓待を受ける。
そこから人の役に立つために立ち上がる主人公・・・
暖かい気持ちになれる本でした。
作中の言葉
彼がやった<一番やっちゃいけないこと>」って結局、<何もしなかったこと>だよね。
何もしない、何も見ない、何も考えない、結局それでしょ?
キモチイイことだけして、後はなーんもしなかった結果の責任を負うことすらしないで、
そのつけをこっちに回してこようったって、そうは問屋が卸しませんよ。
その発言が自分も当てはまることに気づいた主人公。
そして、読者の僕もドキッとしてしまうのでした。
職場に行って働くだけで、生きてはいけるんだ。
そこに、良くしよう。って考えはあるのだろうか?
どれくらい馬鹿かというと、女の子のスカートをめくって怒られて、
「え?だって女子もキャーキャー言って喜んでいたよね?」
なんて不安げにいう小学生男子と同程度に馬鹿だ。
(中略)
SNSへの書き込みも、本人が言うには、
「ちょっと過激なことを書くと、まるで火が付いたみたいにヒステリックなコメントがつくのが面白かった」
とのことだった。
(中略)
そこに誰かがいるということを確認するように、ピンポンダッシュして回るはた迷惑なガキみたいなことばっかりしている。
そして反応があると、それが怒りであっても喜んでしまう。
そんな形のコミュニケーションしか知らないのだ。
居るよな。こういうヤツ。
コミュニケーション取れない(取り方がわからない)から相手に構って欲しくてクソリプ飛ばしてくるやつ。