小説『サヨナライツカ(辻仁成 著)』の感想レビュー。
あらすじ
東垣内豊(ひがしがいとうゆたか)は、婚約者光子(みつこ)を置いてタイへ長期出張。
出張先で同僚から紹介された沓子に半ば強引に関係を持つと身体の相性がバッチリ。
最初は遊びのつもりだった二人も次第にお互いを本気で愛し合っていく。
しかし、豊かには婚約者がおり、沓子もそれは理解している。
二人は相思相愛ながらお互いの立場のために分かれた。
そして二十五年後---
豊は光子と結婚し、二人を息子を設け、常務に昇進していた。
そして、会社の40周年パーティーのためにタイに出向く。
タイに到着した豊は、沓子との蜜月を街のいたるところに見つけ、当時を思い出す。
そしてパーティー会場のホテルに到着した先に居たのは・・・
感想
前編後編に分かれた作品。
前編は、豊のタイ出張で、沓子との出会いとその身体に溺れるまで。
溺れつつも、自分の会社での立場と光子との結婚と・・・
でひたすら悶々とする豊。
僕はここまで女性に溺れたことがないので、豊の気持ちは分からなかった。
浮気という状況で燃え上がっていただけなんじゃないの?
なんて思ってしまう。
というか、職場の同僚から紹介された女性で、一度しか会ったことないのに、
後日、宿泊したホテルに押しかけてきていきなり服を脱ぎだした。
こんな状況になったらあなたはどうする?
勿論、抱くぜ!
なんて展開にはならないよ。色々と警戒しちゃうよ。
光子の親は仕事関係でも密な関係だから、
自分の出世街道を邪魔しようとしている誰かがハニートラップを仕掛けてきた!?
なんて想像も働くと思う。
それくらい突然の出来事。
転じて後半は、前半から25年後。
専務なった豊は副社長の代わりに会社の40周年式典のためタイへ出張へ。
という展開、そこで沓子と再会して
流石に身体は重ねないけど心は当時よりも急接近。
お預け食らって離れ離れになったから余計美味しそうに見えてしまう。
一緒になって全てを捨てていたらそれはそれで後悔していたかもよ?
手に入れられなかった未来だったからこそ、余計に美化されてしまうんだろうなぁ
作中のことば
でもどうか、迷わないで欲しいと思うのです。
悩んでもいいけれど、迷うとろくなことがありません。
悩んで悩みぬいて人間は大きくなるのです。
けれども、迷って迷って迷いぬいた人間は結局擦り切れて薄っぺらになり
最後は悲惨な場所に押し流されてしまうのです。
公開ばかりが残る人生だけはどうかお選びにならないように・・・
迷い方にもよるけど、弱いように流れるなよってことかな?
言いたいことはわかるけど、人生って悩んで迷うものだと思うけれど・・・
人間は死ぬとき、
愛されたことを思い出す人と、
愛したことを思い出す人とにわかれる
あなたはどっち?