小説『そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー 著)』の感想レビュー。
2003年に早川書房から出た清水俊二訳の文庫本になります。
原典は、1939年にイギリスで刊行された同名の本。
以後、様々な作品に影響を与えていて、
僕のレビューでも
【十角館の殺人】新本格推理小説の一番槍。曰くつきの孤島で発生する殺人事件【綾辻行人】
【米澤穂信】【インシテミル】殺し有りの超高額アルバイト
の二点が影響を受けています。
というか、上記二冊を読んだから原典も読もうと思った次第。
あらすじ
さまざまな職業、年齢、経歴の住人がU・N・オーエンと名乗る富豪からインディアン島に招待された。
しかし、肝心の正体主は姿を見せず、客たちが立派な食卓についたとき、どこからともなく客たちの過去の犯罪を告発してゆく声が響いてきた。
そして童謡のとおりに、一人また一人と殺されていくのだった・・・
登場人物
・ローレンス・ウォーグレイヴ・・・高名な元判事
・ヴェラ・クレイソーン・・・秘書・家庭教師の娘
・フィリップ・ロンバート・・元陸軍大尉
・エミリー・ブレント・・・信仰のあつい老婦人
・マカーサー将軍・・・退役の老将軍
・アームストロング・・・医師
・アンソニー(トニー)・マーストン・・・遊び好きの青年
・ブロア・・・元警部
・トマス・ロジャース・・・オーエン家の執事
・エセル・ロジャース・・・トマスの妻、コック
・オーエン夫妻・・・インディアン島の持ち主
オーエン夫妻がとある共通項によって集められた男女10人。
全員、オーエン夫妻とは面識がないにも関わらず、あの手この手で招待され、インディアン島にやってきた。
全員他人同士のなか起こる殺人事件。
生存者(なんだよ自殺かよ・・・)
↓
生存者(えっ、殺人なの!?)
↓
生存者(この中に犯人がいる!?)
どんどん人が減っていく中、疑心暗鬼に陥る生存者たち。
そして、インディアン島からは『そして誰もいなくなった』。
ほんとに誰も居なくなっちゃうんだよ・・・
感想
淡々と人が死んでいく。
最初の犠牲者が出たとき、
「イヤアアアッ!」
「何が起こったんだ!?」
とはならず、すぐに実況見分が行われて、「自殺したんか?」で終わる。
死体を寝室に移動してハイおしまい。
「彼が自殺するなんてねぇ・・・」
おいおい、人が死んでいるんだぞ!?
いや、時代なのかな?
死がもっと身近だった時代だから淡々としているのかもしれない。
登場人物たちの推理はミスリードするわけでもなく淡々と行われる。
人が死ぬたびに状況証拠から疑う人物が変わっていくのが面白い。
あと、極限状態からの熱い友情や、恋愛に発展しないのもよかった。
いい意味でうす味で淡泊。
海外の本や昔の本は読みづらい事が多く敬遠しがちだけど、
『そして誰もいなくなった』は非常に読みやすくページをめくる手が止まらなかった。
様々な味付けや盛り付けのミステリーが出て来ていて、
本著はちょっと味が薄いかな?って感じるけどそれでも色褪せない面白さ。
オススメです。
当時の人々は、この結末に納得したのだろうか?