小説

【イン・ザ・プール】ヤブか?名医か?注射フェチの精神科医に通院する患者たち【奥田英朗】

『イン・ザ・プール』文庫表紙

小説『イン・ザ・プール(奥田英朗 著)』の感想レビュー。

もくじ

あらすじ

「いらっしゃーい」
伊良部総合病院地下にある精神科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。
色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。
そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。
プール依存症、陰茎強直症、妄想癖・・・
訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。
こいつは利口か?馬鹿か?
名医か?ヤブ医者か?

感想

イン・ザ・プール

大森は仕事のストレス?で内臓が痛くなり、頻繁に下痢をしていた。
レントゲンを撮っても、尿検査をしても異常無し。
原因は心因性のものだった。
「一日一回は息が切れる運動をしたほうがいい」
との勧めで大森は水泳を始めた。
最初は辛かったが体も負荷に慣れてきて水泳をしない日は体調が悪くなってしまうほどに水泳中毒になってしまうのだった。
同時期に担当精神科医の伊良部も水泳を始めた。
二人の生活圏のプールは軒並み一時間に一回休憩時間が設けられている。
もっとぶっ続けて泳ぎたい二人は伊良部の提案で真夜中に市民プールに忍び込む算段をするが・・・

プールでの運動に依存し、数時間でも泳ぎたいと思った大森と、
真夜中に市民体育館に忍び込んで一晩中泳ごうと提案する伊良部。

侵入当日、一階トイレの窓から侵入しようとする伊良部はその巨体が窓に引っ掛かってしまった。

そんな姿をみた大森は「そこまでしてプールに入りたいのか?」
なんて自問自答し、自身の行動を客観的に見ることで冷静さを取り戻すことができた。

伊良部も水泳の趣味を持つなんて面白い展開だな!
なんて一話を読んだ時点では思ったけど、後々に患者に寄り添った治療をしているんだなー
と思った。

どこまで本気でどこからが治療なのか分からないところが伊良部らしい。

勃ちっ放し

ある晩、別れた妻と寄りを戻し身体を重ねる淫夢を見た。
夢とも思えないほどのリアルな夢で朝、目を覚ますとムスコは全盛期の頃のように隆起していた。
以後、哲也の陰茎は治まることを知らず、一日中勃ち続けている。
診断された病名は『陰茎強直症』。
精神科医の伊良部が言うには心因性のものなのでその原因を取り除かなくてはいけないと言う。
哲也は、自分がキレることができず、溜め込んでしまうからムスコが怒っているのでは?
という考えに行き着き、その原因の一つになっている元妻に離婚時の恨み辛みをぶつけてやろうと考える。
元妻のマンション近くまで行くものの、元妻と現夫を前に尻込みしてしまい、遠目から眺めるだけになってしまった。
その後、会社の接待で一泊二日の旅行に出かけるも、勃起を隠してのゴルフは散々だし、
風呂に入りたくないがために火災報知機を鳴らしてしまう。
もうどうしようもなく、引きこもり気味だった哲也に大学教授から股間を見せて欲しいと連絡がある。
治療法が見つかったのか!?大学病院に出向く哲也だったが・・・

元妻や職場の人間関係に怒れない分、
ムスコが変わりに怒っている状況。
最後は、怒鳴り散らかすことによってムスコの怒りも落ち着いた。

勃起って肉体的反応よりも精神的な反応の方が強いもんな~
興奮してないのに一日中勃ちっぱなしってどんな気持ちなんだろう?

コンパニオン

コンパニオンの仕事をしている広美は睡眠不足とストーカー被害に悩んでいた。
自宅を出た瞬間から視線を感じ、どこへ行ってもストーカーがついてくる。
同僚からは、「疲れているんじゃない?一度精神科医に見てもらったら?」
気休めで訪れた精神科の主治医、伊良部は、キモデブながらも、助言は的確だった。

・相手は自分の手の届く範囲に居るから狙って来るのでは?
 高嶺の花になれば手を出さないのでは?
・コンパニオンの格好のあなたが好きに違いない。
 すっぴんや、乱暴な態度を見せつけたら幻滅するのでは?
・朝家出るときから家に帰るまでずっと視線を感じるのは複数犯の可能性が?
・男とデートしているところを見せつけ、男に嫉妬させて男にストーカーを擦り付けよう。
助言を守り、ストーカーの意識を男に向けるため、
男と車デート中、広美は視線を感じた。
振り返ってみると、自分の後ろを走っている車全てがストーカーではないか!
広美は外出できなくなってしまった・・・

自意識過剰女の被害妄想。
道路で振り向いたら後続車両全部がストーカーとかホントにあったら恐ろしすぎる。
というか、バキのドリアンを遊園地に運ぶシーンが思い浮かんじゃったよ。

フレンズ

一日に百件以上メールのやりとりをする高校生二年生の雄太。
ケータイが使えないだけで不安になり、機種変更の為に授業を抜け出してしまうほど。
ケータイは友達と繋がるための手段で、他にも流行りの音楽や服装、装飾品まで押さえていて、
自分は人気者!なんて思っていたのは自分だけで、
ケータイで連絡が取れなくなった時もみんなに謝ったものの、周りの反応は自分が思っていたよりも淡泊だった。
相手には相手の交遊関係があり、自分はそんなに必要とされていないのでは?
そう気づいた雄太は、伊良部に連絡をとる・・・

ケータイ依存症かと思いきや、
孤独になるのに恐怖を感じる病気だった。

自分が思うほど他人はあなたのことを気にしていませんよ。
簡単に繋がれるからこそ、陥ってしまう病なのかもしれない。

いてもたっても

自分が吸った煙草の吸殻から火事が起こるんじゃないか・・・
そんな強迫観念に追われ、家をでても不安になって何度も家に戻ってしまうルポライターの岩村。
このままじゃまずいと、自分で病名を調べ治療のために伊良部精神科医を訪ねたのだった。
伊良部は、バケツに水を張り直接消すようにすれば?
と助言、岩村は少し改善したと報告するが、
次はガスの元栓が気になるかもね。
なんて言われたものだから火事を恐れて元栓を閉める生活に。
さらには、漏電から火事が・・・
ということで、家を出るときは、煙草の吸殻はもちろんのこと、
ガスの元栓、電気のブレーカーを落として外出するようになってしまった。
さらに、自分がインタビューした浮浪者が、自分の乗った記事をダシに女性にいたずらを働いてしまい、
自分の責任だと追い込んでしまう岩村。
必至に浮浪者を探すことにするが・・・

家のカギ閉めたっけ・・・
忘れ物してないっけ・・・
なんて自分も結構頻繁に思ったりする。
流石に岩村ほどじゃないけど。

けど、度が過ぎれば

感想の感想

ぶっ飛んでる精神科医、伊良部と、
ぶっ飛んでる看護師マユミ。

患者に対して医者にあるまじき対応だけど、
精神科医って患者に引っ張られて自分も病んじゃうって聞いたことあるし、
彼らなりの予防方法なのかもしれない。

治療方法もぶっ飛んでるけど、適切?な助言を行い、
患者自身なんだかんだで通院し、助言を聞き入れている。
そういう意味では名医?なのかな?

こういうチャランポランな精神科医、一人くらいいてもいいよね。

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