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【スイッチ 悪意の実験】純粋な悪意って何?【潮谷験】

『スイッチ 悪意の実験』ソフトカバー表紙

『スイッチ 悪意の実験(潮谷験 著)』の感想レビュー。

あらすじ

夏休み、お金がなくて暇を持て余している大学生達に風変わりなアルバイトが持ちかけられた。
スポンサーは売れっ子心理コンサルタント。彼は「純粋な悪」を研究課題にしており、アルバイトは実験の協力だという。
集まった大学生達のスマホには、自分達とはなんの関わりもなく幸せに暮らしている家族を破滅させるスイッチのアプリがインストールされる。
スイッチ押しても押さなくても1ヵ月後に100万円が手に入り、押すメリットはない。
「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし・・・。

感想

スイッチを押す期限の最終日、小雪はスマホを紛失。
その間に何者かが小雪のスマホでスイッチを押してしまう。
スイッチの暗証番号は各参加者の誕生月日。
スイッチを押した犯人Sはどのように小雪の誕生月日を割り出したのか?

小雪の端末から入力されたパスワードの失敗は、失敗番号と失敗時間がログとして残っている。
アルバイトの主催者、安楽はそこから犯人Sを特定できると言った。

むむむ・・・これは、読者への挑戦に他ならない!
僕もページをめくる手を止めて犯人Sの特定に挑戦してみよう!

まず、名前の小雪。
作中にもあったように、寒い時期に生まれたのでつけられた名前らしい。
更に、二十四節気という季節の巡りに小雪というものもある。
そして、小雪は中国にも存在していて、パスワードを間違えたのは、日本と中国とで小雪の日に差があるからに違いない!
つまり、アルバイトで一人だけ参加している中国人が犯人Sだ!
→小雪の日は日本も中国も差は無かった。

しかも、小雪~大雪初日までの全てをパスワードで入力してやがる・・・
消去法で、誕生日を覚えていた玲奈は候補から外せるけれど、あとは分かんねぇ~ッ!

お手上げで続きを読んでみるとなるほど納得。
でもなんでこいつが・・・?
更に読み進めていくと動機にも納得。
安楽が犯人Sに確信を持ったのも納得。

そして、時系列をしっかり洗えば犯人Sに辿り着けたんだと思うと、悔しい~ッ!!

内容も、『悪意とは何か?』という問いと、宗教観が妙にマッチしていて面白かった。
結局、安楽の思う純粋な悪意=自分に利害が無いのに相手が不利益になる行為を行えること
は証明されなかったけど、そういった悪意を悪意とも思わずに無意識に実行している人って結構いそうだよね。

序盤の小雪なんか、純粋な悪意を持った存在に近い人なんじゃ?
なんて思わせる展開だった。
ひたすらアルバイトが繰り返されて、何の関係も無い人たちが苦しむだけという展開になるかとハラハラしたよ。

面白い小説でした!
相手の心理を掘り下げる内容って好きなんだよね。

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